articleニュース
テネシー州SB1580成立——AIによる精神健康専門家の偽称を禁止、7月施行
テネシー州が上院法案SB1580を成立させた。AIシステムが精神科医・心理士・カウンセラー等の資格を持った精神健康専門家であるかのように偽装することを禁止し、違反者に民事上の損害賠償責任を課す。2026年7月1日施行。
概要
テネシー州知事は2026年5月26日、上院法案SB1580に署名し法律として成立させた。この法律は、AIシステム(チャットボット・音声アシスタント・アプリを含む)が精神科医・心理士・臨床ソーシャルワーカー・認定カウンセラーなど、テネシー州の免許を必要とする精神健康専門家であるかのように利用者に信じさせることを禁じる。提供者に対して民事上の損害賠償責任を課し、被害者は被った損害額または法定最低額($5,000)のいずれか高い方を請求できる。2026年7月1日に施行される。
事実のポイント
- 「偽称」の定義: ①「私は精神科医です」等の明示的な虚偽表示②資格証書・免許番号の偽造③専門家であることを強く示唆するUI・言語パターンの使用
- 開示義務: AI であることを明確に開示し、資格を持った専門家ではないことを会話開始時に表示することで免除される
- 適用除外: 自分が AI であることを明示した上で感情サポートや情報提供を行う AI システムは規制対象外
- 損害賠償請求は被害者個人、または被害を受けた集団の代理人が行える(クラスアクション可能)
- 違反によって精神的苦痛・自傷・自殺企図が発生した場合は「加重損害賠償(Punitive Damages)」の請求が可能
- 同法は SB1493(AI 自殺扇動禁止)と同日に成立し、テネシー州の「AI精神健康保護パッケージ」として位置づけられる
用語・背景の補足
精神健康専門家の免許制度: 米国の多くの州では、心理療法・カウンセリングを提供するには州の免許が必要。免許なし・資格なしで精神療法を提供することは既存の無免許診療規制で禁じられているが、AIに対する適用は明確でなかった。
AI 感情サポートアプリの問題: Replika・Character.AI など「AI セラピスト」的な機能を持つアプリの普及に伴い、ユーザーがAIを実際の有資格者と誤解するケースが問題となってきた。2024〜2025年には関連した深刻な事例が報告されており、立法の背景となっている。
クラスアクション(集団訴訟): 同様の被害を受けた複数の原告が一つの訴訟として提起する形式。個人では訴訟費用が高すぎる場合に有効な手段となる。
注意点
- テネシー州の法律であり、他州に拠点を置く AI サービス提供者への管轄権(どこまでテネシー州の法律が適用されるか)は裁判で争われる可能性がある
- 「強く示唆する」という基準は主観的であり、どの程度の表現が違反にあたるかは司法が判断する
- 開示要件(AI であることの明示)を適切に行えば免責となるため、コンプライアンスの鍵は「明確な開示の設計」にある
編集部見解
精神的に脆弱なユーザーを AI 詐称から守るという立法趣旨は明確で、社会的な合理性が高い。「AI であることを開示すれば感情サポート機能は提供できる」という免責構造も現実的だ。AI サービス提供者にとっては、開示設計の見直しとUI改善が喫緊の課題となる。
info 公開情報をもとに編集部が再構成したサマリです。一次情報・追加情報は出典欄をご参照ください。